刈込剪定について

 私が12年間、勤務した植木屋は、京都の庭園管理技術を継承し、剪定は自然風でした。今、色々な植木屋さんのお仕事を見るようになりましたが、刈込剪定を多用する植木屋さんが多くて驚きます。私が住んでいる練馬区でも、全ての樹木が刈り込まれている(モミジまで!)マンションの植栽を見かけます。

 そこで改めて日本庭園において刈込剪定が伝統的なものなのか調べてみました。

 刈込の手法は室町時代に生まれ、江戸時代に「人工的なデザイン」を庭に取り入れるようになり普及したそうです。自然風の剪定は「透かし」と言い、人工的なデザインの「刈込」と対になるものです。

 1799年に刊行された「都林泉名勝図会」をみると「金地院庭園」のように全ての樹木が刈り込まれたように見える庭もあったようですが、刈込と言っても透かしの手法を組み合わせ、枝葉の密生を防ぎ、採光通風を確保するのが基本であったようです。これは、江戸時代に書かれた「築山庭造伝前編」に指摘があるそうです。by「風景をつくる 現代の造園と伝統的日本庭園(中村一・尼崎博正 共著)

 今、「金地院庭園」の写真を見てみると、全ての樹木が刈り込まれてはいません。名園と言われている庭を見ても、刈り込まれている樹種は限られていると思います。

 進士五十八先生(東京農業大学元学長)によると「日本庭園の植栽法で最大の特徴は『自然樹形』の尊重にあると思っている」とあります。by「日本の庭園 造景の技とこころ(進士五十八 著)」

 植木屋に勤務していた時は「でべそをつくるな」としょっちゅう言われていました。「でべそ」とは、枝を切る時に適切な位置で切らずに、少し長めに残すことです。樹木医の手引きには「スタブカット」と言って悪い剪定例として載っています。枝を残すと傷口を塞ぐことができず、腐朽してしまうからです。

 刈込は個々の枝にとってはスタブカットになります。萌芽力の強い樹種しか耐えられません。

 刈込は最も簡単に樹木を小さくする手法です。透かし剪定で樹木を小さくするには高い技術力が必要です。しかし、透かし剪定は日本庭園らしい、見た目にも美しい、なおかつ樹木にも優しい剪定方法と言えるのではないでしょうか。

さきたま緑道における刈込作業

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